イギリス・ドイツ視察
久しぶりに登場します、彩賓館 竹内です。
今回1週間をかけてイギリス マンチェスター~ロンドン、ドイツ フライブルグの視察に行ってまいりました。
1日目:ポートサンライト
こちらは1888年につくられた街、ポートサンライトのリーバ社記念館です。
当時の巨大な石鹸工場に働く人々のためにリーバ社の社長が作った街並みです。名前は会社の一番人気商品である「サンライト」という石鹸ブランドから来ているそうです。
釘を1本も使っていないハーフティンバーの建物。ほとんどの建物がアタッチドハウス(3戸以上の連棟住宅)で建てられています。
アタッチドハウスにすることで1件あたりの道路面積を小さくでき、効率的に街をつくることができるというメリットがあります。道路に面した部分にはファサード(顔)が作られ、前庭には芝や花々の緑が配置されています。
1エーカー(4000平米)あたり13件というゆとりの計画で作られた街並みは、トラストと呼ばれる環境保護団体によって守られています。当地区のトラストは現在もユニリーバ社による年間100万ポンドの寄付等を主な収入源として運営されています。
1日目:ソルテア
ウエスト・ヨークシャー州ブラッドフォードにある街で、1853年に巨大な繊維工場の作業員のために経営者であるタイタス・ソルトによって建設された街並みです。現在ユネスコの世界遺産に登録されています。
使用されているレンガの色は、この地方ならではのハニーストーン。
道路に面した前庭。門扉の色もかわいいですね(^‐^)
昔の交通手段は馬車が主であったため、道路が駐車場になっています。
2日目:レッチワース
いよいよ彩賓館がお手本とする街、レッチワースガーデンシティに訪れました。1900年に着手された街は駅を中心に商業施設が発達し、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の人々が暮らす理想の街となっています。
デタッチドハウス(1戸建て)よりも多くみられるセミ・デタッチドハウス(2戸で1棟)。
こちらもセミ・デタッチドハウス。屋根の煙突は暖炉の数と一致していて、煙突が多いほどステータスがあるといわれているそうです。
多くみられるハーフティンバー(真壁)の建物。アングロサクソンのアイデンティティーともいわれ、イギリス人には非常に人気のあるデザインです。
4戸で1棟のアタッチドハウス。色の塗り直しなどの際には、トラストによって定められている厳しいルールに従って行わなければなりません。
3日目:ハムステッド
ロンドン郊外にあるベッドタウン、ハムステッドガーデンサバーブ(サバーブは郊外という意味)には高所得者が多く居住し、有名人もたくさん住んでいるそうです。30%以上の住人がユダヤ人ともいわれています。またクルドサック(袋小路)を最初に取り入れた街でもあります。
現地に住んでいるツアーガイドさんのお宅にお邪魔して、ミルクティーをごちそうになりました(^‐^)
セミ・デタッチドハウスであるこのお宅は20年前に1500万で購入し、今ではなんと1億2000万!(約8倍)になっているそうです。
芝生と花々であふれる広々とした裏庭。
手入れの行き届いたお庭が長期旅行などで枯れないように、向こう3件の方々で鍵を預け合っているいい関係を築かれています。
敷地内は駐車が制限されているため、道路に停められた車両。
どのお宅もお庭の手入れは完璧!
邸宅と呼ぶにふさわしい家並み。約500軒の建物がEnglish Hertage(英国遺産)として登録されています。ガーデンサバーブの資産価値はトラストによって今後も守られ続けていくことでしょう。
4日目:フライブルグ市内
ドイツに入り、環境都市として数々の賞と受賞したフライブルグの市内を散策します。
フライブルグはドイツ南西部にあり、約65km北にはフランスのストラスブール、約50km南にはスイスのバーゼルが位置しています。
ミュンスター大聖堂には8月にドイツ出身のベネディクト三世(現ローマ法王)が来るということで、非常に盛り上がっていました。
大聖堂の周りにはたくさんの市場が出店され、新鮮な野菜やくだものなどが並べられていました。
半径1km圏内は石畳の歩行者天国になっています。
環境賞を受賞したこの通りは空中緑化という手法を取り入れています。
5日目:ハスラッハ地区
フライブルグ中心地からトラム(路面電車)に乗って20分ほどの場所にあり、1920年代からイギリスのガーデンシティ運動を受けてつくられた街です。
特徴のあるデザインは、木を小さく板状にしたものを2Fの外壁部分に使用して作られています。
庭でボーリングを楽しむご主人。1戸あたり約25坪ほどの各世帯ですが、庭は奥行が30mほどあってゆとりのある生活をしているようにみえました。
5日目:ヴィーレ地区
弁護士、医者などが多数暮らす当地区は第2次世界大戦の戦火をまぬがれており、1850年代に建てられたユーゲント様式の街が当時のまま残っています。歴史があるほど人気も高く、高家賃で賃貸されている高級住宅街です。
いたるところに見られるバルコニー。日本では物干し・布団干しが中心と思われていますが、欧州では朝食を食べる場所、あるいは夜ろうそくを焚いてお酒を飲みながら楽しく話をする場所である、と考えられています。
ヴォーバン地区
フライブルグの中でも先進の環境地域であり、Co2排出量を60%削減することに成功した街です。
車を持たない社会を都市計画に盛り込んだ当地区は、壁面に対する緑化率、屋上緑化など様々なルールが細かく設けられています。車を所有する分譲地購入者は1台あたり200万円の追加を支払うことになります。これらの街づくり要綱により、住宅地1000人あたりの車登録台数は、ドイツ平均650台なのに対し、当地区は150台にまで抑えられています。
リーゼルフェルト地区
ヴォーバン地区よりも道路幅、建物間の距離が大きい街。昔は一帯が下水処理場だったところがみごとに緑豊かな街に生まれ変わったことで有名。
今回の欧州視察の目的は、資産価値の上昇をもたらす要因が何であるかを実際の住宅地を見ることで、彩賓館が取り組んでいる街づくりに活かすことでした。日本でも戦前は存在していた隣家とのつながりなど、大切にすべきものをたくさんつかむことができました。今回の視察で学んだことを、今後の日本の住宅地形成を担う一員として、歴史に残る住宅地づくりに生かしていきたいと考えています。
竹内